2019年12月17日、萩生田文科相が大学入学共通テストでの記述式問題の導入を延期すると正式に表明しました。
大学入学共通テストの開始を目前にしての大きなニュースですが、どうしてこのようになったのでしょうか。
今回は大学入学共通テストと記述式問題の延期理由について解説します。
大学入学共通テストとは
大学入試共通テストとは現在のセンター試験に変わる新しい大学入試の試験形態です。現在のセンター試験は2020年度までで廃止され、2021年度から新しい大学入学共通テストが導入予定です。
また2024年度からは2022年から始まる新学習指導要領の実施に加え、大学入学共通テストの本格実施がスタート。2019年時点で中学校一年生以下の生徒が本格実施の対象となります。
今回の改革のそもそものきっかけは2013年に教育再生実行会議が出した提言です。その中で、従来の「知識・技能」偏重型の試験から「思考力・判断力・表現力」も問うことのできる試験への変化が求められるようになりました。まず変化の理由を詳しく見ていきましょう。
変化の理由
文部科学省は「学力の三要素」を「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性・協働性」としています。
グローバル化や多様化によって社会のあり方が目まぐるしく変化していく現代社会に対応する力を身に付けるために、これまでの「知識・技能」偏重の試験から「思考力・判断力・表現力」も強く求められるものに変わります。
その大きな改革の目玉と言われていたのが「英語の入試科目における民間資格・検定試験の導入」そして今までのマークシート方式に変わる「記述式問題の導入」でした。
記述式問題の導入延期が決定
この記述式問題の導入こそが思考力・判断力・表現力を問う試験においての大きな目玉でもありました。私たちが受験生であった頃に言われていたのは「わからない問題があってもとにかくマークシートはどれかを塗れ」。
そう、マークシートであれば「まぐれ当たり」も存在するわけで、マークの裏にその受験生がどのような考え方をして答えを導きだしたのかまでは採点者が知ることはできませんでした。
しかし、11月1日に英語の入試科目において民間資格・検定試験の導入が2024年度に延期されたことに続いて、今回の記述式問題も導入延期。
これで大学入試改革の大きな目玉が失われたことになります。
記述式問題の懸念点
記述式問題については実務の面からも50万人分以上の答案を採点する必要があり、それを一万人で20日間程度で行うために当初からアルバイトの採点ミスやブレへの懸念がありました。
また過去に実施されたプレテストでは、記述式問題の解答と受験生の自己採点にずれがあることも判明していました。
学校の現場からも教師から「正確に自己採点できているか分からず、出願先の検討で迷う」「廃止にすべきだ」といった声が聞かれていました。
こうした記述式問題の懸念点に関して、文科省は現時点での有効な対策がないとして導入延期を決めたとのこと。
受験生にとっては振り回されることの続く大学入試共通テスト。
今後も大学入試共通テストがどうなるのか、引き続き注視していきたいと思います。