中学生になると算数が数学となり、専門的な用語も増え、先入観から苦手意識が芽生えてしまう生徒さんがいます。
保護者の中には、最初の定期テストの点数を見て、良くも悪くも驚かれた方も多いかと思います。特に平均より低い点数であった場合は、高校受験も控える中、心配に思われることでしょう。
数学は積み重ねが必要ですので、成績が思わしくない場合は、できるだけ早くつまずきの原因を見極めて解消しておくことが大切です。
つまずきの原因は様々です。点数からだけでは見えてこない「生徒が困っていること」を見極め、「生徒にあった目標」を具体的に決め、「基礎から計画的に成績を上げていく」ことを丁寧に指導していくことで、最短で確実に、定期テストでの数学の成績を押し上げることが可能になります。家庭教師の経験で培ったこれらの取り組みをご紹介します。
生徒が困っていることを見極める
家庭教師として私が最初に行うのが、生徒さんと保護者とのコミュニケーションです。その生徒が抱えている課題や勉強法を見つけるための第一歩になります。試験の点数だけからは見えてこない生徒さんが本当に困っていること、生徒さん自身も気づいていなかったことを会話を通して一緒に見つけていきます。
例えば、あるご家庭では、生徒さん(以下Aさん)は、数学に対する苦手意識はそれほどないにも関わらず、定期テストで点数が取れなかったことに「自分でもどうしてなのかわからない」ような状態でした。一方、保護者は、試験の成績が悪いことに「この子は数学が苦手」というレッテルを貼ってしまっていました。
生徒さんと保護者との認識のズレはよく見られます。数学のテストの点数が低いと、単に「数学が苦手」という「思い込み」が生じ、それがそのままその生徒さんへの評価となりがちです。苦手というレッテルは、生徒さんに無意識に苦手意識を刷り込み、思考停止に落ち込んでいくばかりで何の解決にもなりません。
生徒さんとの何気ない会話を通して、ほんとうに困っているという状態を紐解き、一つずつ解決可能な事項に落とし込むことが重要です。家庭教師だからこそできることかと思います。
これらを保護者とも共有することで、保護者も単なる「苦手」という一言で済ますことなく、具体的に、なぜ成績が上がらないのかを知ることができ、その結果、家庭での声かけや接し方も変わっていくことで学習環境も整い、生徒さんのモチベーションの維持へと繋がっていきます。
<Aさんが本当に困っていたこと>
Aさんの場合は「自分でもどうしてなのかわからない」という状態を紐解いていったところ、以下のような原因がわかりました。
結果・・・テストの点数が悪い。
↓
状況・・・どうしていいのかわからない。
↓
原因
- 制限時間内に全部解かないといけないという思いからくる焦りがある。
- 苦手な文章問題を過剰に意識してしまい、本来できるはずの計算問題を早く済まそうと余計に焦ってしまう。
- その焦りから、計算問題でもケアレスミスが多発してしまう。
関連記事:数学のケアレスミスをなくすには?原因と対策をプロが解説
生徒にあった目標を具体的に決める
短期間での成績アップは、次の定期テストが最初の関門になりますので、ここでの目標を具体的に決めていきます。
指導開始の時期にもよりますが、2ヶ月前後ほどしか準備期間がない中で、例えば、前回30点をいきなり90点にしたりすることは現実的ではありません。
最初の定期テストは、やればできるという「達成感」を感じることができる点数を想定し、生徒さんが気負うことなく、現状の実力+αで手が届くレベルはどの辺か、次へのステップへの自信につながる点数は何点なのかを生徒さんの得意不得意を鑑みながら決めていきます。
その際、同級生や兄弟姉妹等との比較や無理強いするような目標の決め方は逆効果になります。
中学の数学の定期テストの標準的な問題構成は、計算問題7割・文章問題3割です。点数配分にもよりますが、計算問題だけでも全て解くことができれば、単純に考えると70点になります。文章問題は各10点配点で、1問でも解ければ、計算問題と合わせて80点になり、内申点4に手が届きます。内申点5を狙う場合は、2問解けば計90点となり目標を達成できます。
<Aさんの目標設定>
ご相談を受けた時点での定期テストの点数が約30点で、クラスの平均点が約50点でしたので、次の定期テストでの目標を60点にしました。
Aさんは、幸い計算問題への苦手意識は低いと言うことに加え、前回の定期テストの答案用紙の内容から、計算問題のケアレスミスが多いことが分かりましたので、ケアレスミスを防止し、計算問題で確実に点数を稼ぐことができれば、60点は実現可能な目標と考えたわけです。
内申点の5段階評価で1〜2だったものを3相当に引き上げることが最初のステップになります。
さらに、計算問題で確実に点数を稼ぐことができるようになれば、試験の焦りを抑え、落ち着いてテストに挑むことができる好循環が生まれることを期待しました。
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基礎から計画的に成績を上げる
ステップ1:基本問題をミスなく確実に解く
定期テストの対策では、基本問題を確実に解くことができるようになることが優先です。
例えば、文字式の計算に慣れることから始めていきます。x,yなどの文字を用いることに目が慣れていくと、連立方程式や1次関数などの文字式を操る問題への戸惑いが薄れ、数学の苦手意識が格段に和らぎます。ゲームの暗号を解読した時のような達成感を感じるようになればしめたものです。
図形問題は、基本問題として出題される図形のパターンは決まっています。いくつかの決まりごとをまずは覚え、それがどのように使われるのかを練習問題を通して身につけていきます。図形問題は、一度コツをつかむと、クイズを解くような面白さを感じることができるようになります。苦手領域が一気に得意領域になります。
部活動をされている生徒さんのご家庭では、基礎練習の大切さを実感していることと思います。例えば、サッカーや野球では、ドリブルやキャッチボールの基礎練習に大きな意味があり、トップアスリートも最も重視しています。勉強もスポーツも基礎を疎かにすると、良い結果を継続して得ることが困難になります。
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ステップ2:文章問題・応用問題にチャレンジ
基礎力が身に付いてきたら、並行して、文章問題のような応用問題に取り掛かります。これは教科書あるいは教科書ワークの「例題」を用います。
例題の問題文と解答をしっかりと理解することが、応用力を高める最初の一歩です。問題数を解くことより質が大切です。ひとつひとつ丁寧にしっかり理解するまで向き合っていきます。あれもこれもと問題集にあたるのは得策ではありません。
文章問題への取り組み方は、たったの2つです。ひとつひとつの例題をしっかりと理解するまで、丁寧に繰り返し取り組みます。
(1)問題文をよく読む
問題文に、解答のヒントが全て記されています。文章問題が苦手な生徒さんの特徴は、問題文をほとんど読まないことです。目についた数字をもとに、感覚的にいきなり答えで出そうとします。まずはその癖を直していきます。
(2)問題文の意味を理解する
問題文に書かれている数字や事柄には、必ず何らかの「関係性」があります。文章問題は、この関係性を見抜き、それを数式で表すことが求められます。
例えば、問題文に「三角形の・・・」とあるのに、三角形の基礎的な性質を忘れた、あるいは、気づかずに解けない場合があります。この場合は、三角形について再度見直しを行います。
また、中学の数学でつまづきやすいのは、「動く点P」の問題です。これは言葉に惑わされているだけですので、例題を通して落ち着いて解けるように慣れていきます。
<Aさんの場合>
「もしできるようなら文章問題もやってみて」というような曖昧なアドバイスは控えました。
Aさんの場合は、文章問題の目標は「チャレンジ」という形にし、3問出題されたら、1問を集中して解くという作戦にしました。その結果、目移りも焦りもなくなり、2回目の定期テストでは、80点近くまで数学の成績を伸ばすことができました。
確実に無理なく点数を伸ばすことができたことで、生徒さんの顔も明るくなったのが印象的でした。
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まとめ
数学は積み重ねが大切です。つまずきの原因を早期に見極め、生徒さんにあった勉強法で取り組むことで、無理なく数学の定期テストの成績を押し上げることが可能です。
試験の点数からだけでは見えてこない生徒さんが本当に困っていることを把握し、基礎力をしっかりと身につけることで、文章問題などの応用問題に対しても確実に点数を取ることができるようになります。
また、生徒さんにあった具体性のある適切な目標を設定することで、達成感と自信が生まれ、前向きに取り組むようになります。