2018年、日本の教育界は大きな変革の前夜にありました。2020年に予定されていた大学入試制度の改革は、受験生や教育関係者の間で大きな話題となっていました。今回のコラムでは、当時の展望と2024年現在の実態を比較し、この6年間で何が変わり、何が変わらなかったのかを詳細に検証します。※元の文章から加筆した部分を赤文字にしています。
センター試験から共通テストの変更点
2020年に行われる教育改革の中には、大学入試も変更に組み込まれています。
大学入試センター試験が2020年1月の実施をもって廃止されます。2020年1月のセンター試験はあくまでも浪人生向けに実施されるもので、現役生は、導入されたばかりの大学入学共通テストを受験することになります。
センター試験の廃止を知る親御さんは多くいらっしゃると思いますが、代わりにどういったテストが行われるかなど、今までの試験とは何が違いうなど詳しい内容まで知っている親御さんは少ないと思われます。ですので、大学入試の変更点をお伝えします。
大きな変更点は2点となります。
国語と数学で記述式問題の導入と、英語は4技能、民間資格・検定試験を活用する。といった変更が大きな改革となっています。
予定通り2020年1月にセンター試験が終了し、2021年1月から共通テストが実施されています。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、初年度は様々な混乱がありました。2024年現在、共通テストは4回目の実施を迎え、運営面での課題は徐々に改善されつつあります。
関連記事:大学入試が新たなステージへ!大学入試改革の背景と保護者の方の最適なサポート方法
変更点の説明
センター試験で重視されていた詰め込み型の知識力だけでなく、思考力・判断力・表現力を測る試験になります。ただし、従来のセンター試験方法の、マークシート形式も使用し一部で記述式の問題も取り入れられます。
【国語と数学で記述式問題の導入】
国語では、漢文と古文を除く範囲。そのため、現代文で記述式の問題が出題されることになっています。
数学では、数学ⅠAにおいて解答方法を記述させる問題が出題されます。いまのところ記述式の問題が出題されるのは数学Ⅰの範囲に限定されています。
記述式問題の導入は、採点の公平性や時間的制約などの課題から見送られました。しかし、思考力・判断力・表現力を測る必要性は依然として高く、各大学の個別試験で対応する動きが広がっています。東京大学や京都大学など、多くの国立大学が独自の記述式問題を導入しています。また私立大学でも、同志社大学や立命館大学など、独自の記述式問題を取り入れる大学が増加しています。
関連記事:テスト対策はこれでOK!中学国語の古文の効果的な勉強法!
【英語は4技能、民間資格・検定試験】
英語の試験においては、民間の資格試験の成績結果を使用することになります。
民間の資格試験は、TOEICやTOEFLなどを、大学受験をする年の4~12月に受けることが必要です。その際の試験資格を、大学入試センターに提出することにより、成績が大学入試センターから出願した大学へと送付される仕組みになります。また、従来のセンター試験のような英語の試験を大学入試共通テストの試験日に行い、その成績も大学に送付すること可能。
民間で行われている資格・検定試験に変更することになるので、英語を「読む」「聞く」という受け身の技能だけでなく、「話す」「書く」力が必要となります。そのため、受験で使用される英語の能力で問われる力が、2技能から4技能に変わります。
民間試験の活用は、地域間格差や経済的負担の問題から見送られました。しかし、英語4技能評価の重要性は認識され続けており、各大学が独自の方法で対応しています。
一部の大学では、独自の英語スピーキングテストやライティング課題を導入しています。例えば、上智大学ではTEAP(英語能力判定試験)を活用した入試を実施しています。
関連記事:【2024年8月更新】英語民間試験導入はなぜ消えた?大学入試改革の舞台裏
教育現場と受験生への影響
2020年に教育改革が起こる事で、知識を蓄えれば成績を上げることに繋がっていた従来の勉強とは違い、知識を応用できるように理解したり、発信する能力が問われるようになります。
また現段階では、まだ定まっていない部分もある教育改革ですが、現状でもより複雑になることが予想されています。そのため、上手に時間を活用し、効率よい勉強法で取り組む必要性があります。
当初予定されていた大幅な改革は実現しませんでしたが、思考力・判断力・表現力を重視する傾向は強まっています。学校現場や塾業界では、これに対応するためのカリキュラム改革が進んでいます。
関連記事:効率的に勉強して成績アップ!効率化の3つのヒントとは?
大学入試改革まとめ:2018年の展望と2024年の現実
2018年に構想された大学入試改革は、様々な課題に直面し、当初の計画通りには進みませんでした。しかし、その根底にあった「知識偏重から思考力重視へ」という理念は、形を変えながらも着実に浸透しつつあります。2024年現在、大学入試は依然として過渡期にあり、今後も社会のニーズに合わせて進化し続けるでしょう。教育関係者、受験生、そして保護者は、これらの変化に柔軟に対応しながら、真の学力向上を目指す必要があります。