道徳心を養うには?子どもの心を育て、モラルや道徳を身につける方法

スマホを始めとしてインターネットが生活に欠かせないものとなると同時に、様々な情報が氾濫する今の社会では、子どもが正しく善悪を判断する心を養い、モラルを身につけるための道徳心を養うことが重要になっています。

文部科学省は2015年に学習指導要領を改正し、道徳が教科として扱われるようになりました。今回はこの事を中心にして、今一度「道徳」というものについて考えてみたいと思います。子どもの健全な成長に欠かせない道徳心ですが、学校やご家庭でどのように身につけさせる事ができるでしょうか?

新しくなった道徳の授業

新しくなった道徳の授業

小学生・中学生のお子さまを持つ保護者の方は学校の道徳の授業が変わったという話を聞かれたことはないでしょうか?

2015年から学習指導要領の一部改正により、「特別の教科 道徳(道徳科)」として道徳が教科になりました。
それまでは、小学校、中学校、中等教育学校の課程のひとつとして「道徳の時間」は設けられていましたが、教科(※)に格上げされたという事です。

※教科とはいっても「特別の教科」という位置づけになり、他の教科のように数値で評価されるものではありません。ほかの生徒と比較されることもなく、また入試科目になることもありません。

小学校は2018年度、中学校は2019年度からこの新しい形の「道徳」は全面実施されています。

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「道徳」が変わった理由

暗い日本社会

では、このように道徳の授業が変わった背景には何があるのでしょうか?

後を絶たないいじめ

その一つの理由は、後を絶たないいじめ問題です。

驚くことに2018年度に全国の小中高校と特別支援学校で認知されたいじめの件数は54万件以上になりました(文部科学省の発表データによる)。これはその前年より30%も増えています。また2019年ではさらに増えて61万件を超えています。

いじめの件数に関しては「いじめ防止対策推進法」が2013年に公布されたことをきっかけに「いじめはないほうがいい」とする姿勢から「できるだけ認識する」姿勢へと変わりました。そのこともいじめの認知件数が増えていることの一つの理由ではありますが、まだ認知されていないいじめも多く存在するのは想像に難くありません。SNSなどが広く発達した現代だからこそ、「見えないいじめ」も広がりを見せています。

「見えないいじめ」の広がり

その一例として、上記に挙げたいじめの認知件数と、ネットいじめの認知件数を見ていきましょう。どちらも発表元は文部科学省になります。

いじめの認知件数
出典:R2児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
いじめの認知件数について2020年(令和2年)ではそれまでの増加傾向から一転して、15.6%減の51万7千件となりました。これにはコロナで外出が少なくなり、人と会うことが減ったという事が理由の一つとしてあげられます。その一方でネットいじめの数は増加しており、2014年の認知数7898件から一貫して増え続け、2020年には2.4倍の18870件の認知数となっています。

ネットいじめの認知件数
出典:【いじめ予防100のアイデア】第10回「いじめ認知件数の減少は“見えにくさ”増加の表れでもある~“ネットいじめ”6年前の2.4倍に」 | TBS NEWS DIG

いじめは子どもたちの心を深く傷つけ命までも奪ってしまう深刻な問題です。いじめをなくすためには、子どもたちが道徳的な判断をする力を身につけることが重要です。新しくなった道徳の授業では、いじめの原因や対処方法についても学びんでいくようになります。

様々な情報が氾濫する現代社会

先にも少し述べたように、現在、インターネットの普及により、多くの情報が溢れた世の中となりました。また、Facebook(フェイスブック)やLINE(ライン)といったSNSやYouTubeなど、便利で簡単なアプリケーションが増え、快適な暮らしのサポートとなる一方で、心の成長が出来ていない小学生や中学生といった子供にとっては時に、いじめなどの重大な問題を作り出すアイテムになっています。

情報が氾濫する日本社会

小学校や中学校という、小さなコミュニティで暮らす子供には、まだ善悪の重大な問題を正しく判断することが出来ない部分も存在します。
今の社会において、正しいモラルや判断力を身につけさせるためにも道徳の授業が強化されるようになったのです。

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道徳の授業が変わるまでの経緯

しかしながら従来の道徳教育は学校教育の中で軽視されている実態がありました。その一因には前の戦争で、政府が教育勅語に基づく道徳教育を推進したことで、国の指導に盲目的に従うことが、戦争への道を進む一因となったことの反省もありました。このことも踏まえて、道徳の授業が変わるまでの経緯を日本教育新聞から一部引用して紹介しましょう(※)

※引用内の「道徳教育の現状」は従来の道徳教育を指しています。

文科省の有識者会議は道徳教育の現状について、多くの問題点を指摘しています。歴史的な経緯に影響され、道徳教育自体を忌避する風潮が残っているうえ、通知表への記載が必要ないこともあって、軽視されやすく、他の教科に振り替えられることがしばしばあったことです。

さらに、教員に道徳教育の理念が十分に理解されず、効果的な指導方法が確立されていないことも課題として挙げられています。

文部科学省は道徳の教科化前に副読本の「心のノート」を全国の小中学校に配布するとともに、道徳教育推進教員を中心とした指導体制を推し進めましたが、改善が見られませんでした。これも抜本的な制度の手直しに踏み切る一因となりました。

出典:特別の教科となった道徳、以前とどこが変わったのか‐日本教育新聞電子版 NIKKYOWEB

どこが変わった?新しくなった道徳の授業で学ぶ事

新しくなった道徳の授業

そのため、新しい道徳の授業では相手を思いやる気持ちや命の尊さを理解し判断力を身に付けることを重視する内容となっています。
また、情報モラルといった、インターネット上のコミュニケーション・マナーに、情報社会での権利に関する内容も学ぶことになります。

具体的には改正される以前の道徳と改正後の道徳の授業の違いは、大きく以下の点にあります。

  • 教科化の導入: 教科化に改正される以前は、道徳は単なる「道徳の時間」として位置付けられていました。しかし、改正後は道徳科として教科化され、検定教科書が導入されました。これにより、道徳教育がより体系的かつ統一された内容で行われるようになりました。
  • 内容の充実: 改正後の道徳教育では、いじめや自殺などの問題に対応するための内容が充実しました。また、発達段階を踏まえた体系的な内容改善が行われ、個性の伸張や相互理解、公正・公平などの項目が追加されました。これにより、より幅広い視野での道徳教育が行われるようになっています。
  • 指導方法の工夫: これまでの一方通行的な授業ではなく、問題解決的な学習や体験的な学習が導入されるなど指導方法も工夫されました。これにより、生徒がより実践的な道徳的な判断力を身につけることが期待されています。
  • 評価方法の変更: 先にも述べましたが、ほかの教科のような数値評価ではなく、児童生徒の道徳性に係る成長の様子を文章表記で評価するようになりました。これにより、生徒の個々の成長や理解度をより具体的に把握することが可能になりました。
  • 授業時数の維持: 授業時数は改正後も年間35コマ(小学校1年生は年間34コマ)の週1時間で維持されています。これにより、道徳教育が生徒の学びの中で適切な位置付けを維持しています。

また、ディスカッションなどを交えることで、発言力や打開力といった日本人に足りない能力を養い、互いに意見交換することで新たな発想を促すことを大切にしています。そうして生まれた内容を考えさせることで生徒同士で道徳心を高める効果が期待されています。

ディスカッションする中学生

このように道徳の教科化による改正は、より効果的な道徳教育を実現するために、内容や方法において大幅な改善がなされました。

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道徳的に考えてみよう:「不登校」は悪いこと?

現代社会において、不登校は社会的問題とされています。しかし、いじめや誹謗中傷の被害にあっているお子さんにとっては、学校という狭いフィールドで一日の大半を苦悩しながら生活を余儀なくされることに深いダメージを負い、学校へ行けなくなってしまうケースが多いです。また、いじめにだけが原因ではなく不登校になることあります。

例えば学校に馴染めないお子さんや、家庭内での両親の不和などで不登校となる神経症や、何もやる気力がおきない無気力、学業不振などにより、周りの評価に耐えきれなくなって学校に行けなくなる、といった様々な理由で不登校になる子供たちが増えています。こうした状態でも不登校は本当に責められるべきものなのでしょうか。

不登校の子供

もちろん、不登校のお子さんを持つ親御さんにとっては、学業の遅れや社会復帰への不安など、多くの悩みが存在することでしょう。不登校からの復帰には、カウンセリングの受け入れや、家庭内でのサポートが不可欠です。親が子供を支え、適切なケアを提供することが重要です。
無理に学校に行かせようとすることで子供を追い詰めるのは危険ですので、親が子供とのコミュニケーションを大切にし、子供のペースに合わせた支援を行うことが必要です。

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家庭でも「道徳心」を身につけさせるには?

もちろん学校教育だけでなく、ご家庭でも道徳教育を通して子どもに「道徳心」を身につけさせることはできます。学校での授業だけでなく、日常生活の中で親が子供に示す良い行いや正しい判断が、子供の道徳心を形成する上で大きな役割を果たします。以下では、家庭で実践できる具体的な方法を紹介します。

本や映画を活用した道徳教育

本や映画を活用した道徳教育

本や映画などの作品には様々な価値観や倫理的な問題が描かれており、それを通じて子供たちは良い行動や悪い行動の結果を学びます。
子供たちは物語の中の登場人物の行動を通じて道徳的な考え方について考えるようになるでしょう。

例えば、他人に親切にすることや困っている人を助けることの大切さを理解し、逆にどういう行動や考えが人を困らせ傷つけるのかを知ることもできるでしょう。
親が子供に対して本や映画の登場人物の行動を引き合いに出し、「○○ちゃんもこんなふうに素敵な行動ができるよね」と話すことで、子供の道徳的な理解が深まります。

家族の役割と責任感

家族の役割と責任感

家族内で明確な役割と責任感を持つことは、子供にとって道徳的な価値観を身につける上で重要です。子供に特定の家事を担当させたり、家族の食事の準備や片付けを手伝わせたりすることで、子供は責任感や協力の大切さを学びます。また、子供は与えられた役割をしっかりと果たすことで、自分に自信を持ち、ポジティブな行動へとつながります。

日々の学校生活の中で、子どもたちは自然と責任感や協力の大切さを学びます。例えば、後の人のことを考えて行動することやサボったりしたら必ず誰かに迷惑がかかることなどです。これは家庭でも同じように取り入れることが出来ます。
子供に対して「これは○○ちゃんに任せようかな」「これからは玄関のお掃除係になってね」といった具体的な役割を与えることで、子供が自ら行動することの重要性を理解し、責任感や協力の精神を身につけることができます。

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道徳心を養う方法まとめ

思いやりを持つ中学生

文部科学省の2015年の学習指導要領改正により、道徳が教科として扱われるようになりました。改正により内容や方法が見直され、生徒の個々の成長や理解度を評価するための仕組みも整備されました。

しかしながら道徳教育は学校だけでなく、家庭でも重要になります。本や映画を通じて価値観を学ぶことや、家族内での役割分担や責任感の育成は、子供の道徳心を養う上で効果的です。また、日常生活の中での学びを家庭でも取り入れることで、子供が自ら行動する重要性を理解し、責任感や協力の思いやりの精神を身につけることができるでしょう。